『勿忘にくちづけ』ライナーノーツ

  1. 勿忘にくちづけ
  2. 雨にうたえば
  3. distracted

-リリースによせて-

「勿忘にくちづけ」は、人から人へ受け継がれていく伝統・愛情を表現した曲です。
日本の夏の緑の中を短い電車が通り抜けるようなイメージで作りました。モチーフに、私の地元の伝統産業のひとつでもある久留米絣の「藍」を夜明けの空の深い色として重ねています。
裏打ちのアコギと、横に広がるような、現代っぽくもあり、和テイストも感じられるピアノ、実験的なパーカッションの録音で涼しげに仕上げました。
曲を書いていた当時、何の気なしにタイトルに入れた「勿忘」のわすれな草は、別名「藍微塵」と呼ばれるそうです。私はそれを知らずに久留米絣をの藍色を重ねて曲を書いていたので、後々知ってドッキリしたりして、そういう不思議なつながり、重なりが生まれてくるところがまた音楽の興味深い感覚で、好きなところでもあります。
優しさや美しさだけでなく、音楽には言葉にできない思いが投影されてしまうので、それぞれの想いを重ねて様々な解釈で楽しんで頂きたいです。


01. 勿忘にくちづけ

-ライナーノーツ-

テーマを頂いて何かに向かって自分なりの曲を作って提示することは好きです。
そもそも、地元の福岡県久留米市の伝統の織物「絣」をテーマに作り始めた曲でした。イメージの中では爽やかさと、さりげない和の民族感があって、アコギ1本では表現できないなーと感じながら、ピアノとパーカッション3つの音で成る1曲となりました。
伝統というものは、親から子へとか、師匠から弟子へと継がれていくものだと思うんです。当人のいなくなったところに残り続けるものを、受け継ぎ、生活をただ営むように暮らしの中に根付いていくというイメージが根底にあってできた曲です。そんな情景と、そのときに私の個人的な思いで抱えていた、「人から人へと受け継がれていく愛情」みたいなものが合わさって出来上がっていったものなので、聴く人や環境によって感覚はさまざまだと思いますが、一貫して綺麗な、涼しげな曲になったことが救いであり、うれしいです。
bilberry tourの中でも心がふっくらと乗っかった大切な1 曲となり、またこうして盤にできて嬉しく思います。
新しい植田真梨恵をまた一からお届けしたいな。と思ってます。


02. 雨にうたえば

-ライナーノーツ-

新しい植田真梨恵をという思いがあって、そのカップリング曲にと作ったのがこの曲です。
あんまりいつも曲を作る時に細かいことなんか考えていないんです。これはとてもシンプルに、大切な人とケンカしてしまって書いた曲です。怒りの感情を我慢しても、だれか友達に話しても、本人にぶつけても、どれも新たな悪い連鎖を生んでしまいそうだなと思って。私自身も逆の立場で、関係のないところで怒りを事故的にぶつけられたとき、それでこれ以上、慰めをする以上にどうしたらいいんだろーなと困ったりすることがあって。お天気のような感情を持つ人間にとって、そこにバイオリズムなんかも合わさってきて、そんな人たちが交差する毎日の中で、なんとか自分の行き場のない気持ちを沈めに曲を書いてみました。書き始めた瞬間はもっとしめっぽい雰囲気とテンポ感でしたが、なんだかもう雨上がりのような晴れ空を歌うようなイメージになったらいいなーと思いながら、アレンジを進めました。
編曲はこれまでも何度かお願いしているjoe daisque で、アンニュイな空模様、テンション感、決して晴れやかなファンファーレではないホーンのメロディも含めて、ニュアンスにこだわった、少し大人の域に入った今の私にしか書けない曲かなーと思います。


03. distracted

-ライナーノーツ-

大切な言葉だけを紡いで、丁寧に丁寧に曲1 曲を完成させたいなと思いながら、作った曲です。distracted とは辞書によると、
1<注意などを> そらされた; 気の散った
2 取り乱した, 狂気のような,
とあります。元々さすがに人には言えないようなきつい仮タイトルをつけてしまっていて、久しぶりにタイトルを考えるということに一生懸命になりました。
歌に対して、メロトロン一発で。モノラルでさらにいさぎよいMIX でお届けしています。もう、メロトロンという楽器が大好きです。strawberry fields forever を耳がちぎれるくらい繰り返し聴いて、また繰り返し驚いたりしました。一緒になって、西村さんががんばってくれました。
初回盤の方には、この曲の生まれたタイミングで、歌詞とメロディーを書いて自分でも初めて実際にフルサイズを歌ってみるときに録った、正真正銘の生まれたて弾き語りデモを収録しています。フロム私のiPhoneのボイスメモより。どちらもどちらの良さがあると思うのです。とても好きな曲ができました。